鷗外全集も読む日記

ちくま文庫版 「森鷗外全集」も読んでいく日々。

「独逸日記」#3(p.218)、歴史のうねり

この男の、次の4年間がやって来る。
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しかし、世界はこの男だけで成立しているわけではないし、アメリカ大統領に与えられた権限は印象以上に案外少ないのである。ただし、その限られた権限のなかで歴代大統領はうまく立ち回ることをしてきたのもまた事実だ(それゆえに、われわれはアメリカ大統領職に幻想を懐いている)。
まずは、最初の100日をウォッチしてみたい。

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「独逸日記」。いささか番外編っぽくなるが、今回は年月飛んで1888年(明治21)のこと。
3月9日に、時のドイツ皇帝・ヴィルヘルム1世が崩御する。
日記には、

九日1888年3月9日のこと:引用者註)。独逸帝維廉(ウィルヘルム:引用者註)第一世崩ず。

と素っ気ない一行のみ書かれている。
その翌日3月10日の日記もまた同様に一行のみ。

十日。普国プロイセン王国のこと:引用者註)近衛歩兵第二聯隊の医務に服すべき命あり。隊務日記の稿を起す。

ヴィルヘルム1世は、ご存知のとおり、普仏戦争勝利を経てドイツ統一1871年)を成し遂げたプロイセン王(7代)にして初代のドイツ皇帝である。首相には「鉄血宰相」ビスマルクを就任させ、彼とは侃侃諤諤の仲だったものの、議会が反対するなかでも彼を首相としてずっと起用し続けた。
※なお、ドイツはその後皇太子フリードリヒがフリードリヒ3世として即位したが、彼も在位3ヶ月ほどで崩御したため、ドイツ皇位プロイセン王位は孫のヴィルヘルム2世に引き継がれた(そしてビスマルクはヴィルヘルム2世とは折り合いが悪く失脚させられた)。

鷗外はそのときベルリンにいた。大帝崩御の報に接しただけでなく、待全体の雰囲気もそして歴史の大きな流れも肌で感じていただろう。わたしたちもまた歴史の渦中にあることを、いま感じているはずだ。