大学の科目試験初日、3科目を受けてきた。
まあ、撃沈ひとつ、あとはサルベージしてくれたら嬉しいですけどね。
明日も朝から[西洋史特殊(ロシアの政治)]を受験する。eラーニング科目でそこそこ費用もかかっているし、合格できますように(そこはそれ、自分次第ではある)。
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陳と付き合うようになってから、魚玄機の詩には《閨人の柔情》が多くなり、《道士の逸思(いっし)》が少なくなっているのが、温庭筠には伺えるようになった。要するに女性らしい感情表現が多くなり、高踏的な道教思想の言葉が減ってきたというのである。遠くにいる温にはその事情がよく解らない。
陳との年月が7年ほど経ったころ、侍女の老婆が死に、その後に来た婢は18歳の若い女性、緑翹(りょくぎょう)。顔は美しくないが聡慧で媚態があった。歳のわりには色気があるということなんだろう。
とはいえ、玄機には緑翹は年端もいかぬ女児と映っていた。陳もよく緑翹をからかって遊んでいた。
対する玄機は26歳になっていて、ますます美しさに磨きがかかっている。
緑翹といえば、
緑翹は額の低い、頤(おとがい)の短い猧子(かし。[犬種でいえば狆:引用者註])に似た顔で、手足は粗大である。領(えり)や肘はいつも垢膩(こうじ。[赤で汚れて、脂ぎっていること:引用者註])に汚れている。
散々な言われようだ。
しかし、
そのうち三人の関係が少しく紛糾して来た。これまでは玄機の挙措が意に満たぬ時、狆は寡言になったり、また全く口を噤んでいたりしたのに、今は陳がそう云う時、多く緑翹と語った。その上そう云う時の陳の詞(ことば)は極て温和である。
玄機は陳某と緑翹の仲を疑い始め、嫉妬心に火がついた。
あるとき、どうにもならず玄機は緑翹を部屋に閉じ込めて詰問した。彼女は存じませんの一点張りである。それがますます玄機の怒りの炎を煽る。
玄機は床の上に跪いている女を押し倒した。女は懾(おそ)れて目を睜(みは)っている。「なぜ白状しないか」と叫んで玄機は女の吭(のど)を扼(やく)した。女はただ手足をもがいている。玄機が手を放して見ると、女は死んでいた。
玄機が緑翹を殺害したことはしばらく誰も気がつかなかった。陳でさえ、玄機が嘘をついたことに対して反応を示さない。
玄機は緑翹を観の後の庭の土中に埋めたのである。誰にも気づかれないかと思ったが、天網恢恢疎にして漏らさず、コトはあっけなく明らかになった。
彼女は捕まり、そして斬に処せられることになった。
不世出の才媛を救おうと李億をはじめとして多くの人が尽力したが、罰は変わらなかった。
彼女の死を一番悲しんだのは温庭筠であった。そしてその彼も遊女屋での諍いがもとで地方に左遷され、あっという間に死んでしまった。その彼を追うようにして、彼の息子も叛乱に巻き込まれて殺害された。
実に、魚玄機が処刑されてからわずか3ヶ月ほどでのことである。